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みちのく潮風トレイル
連載小説「潮風の速さはどれくらい」
巡回展

三陸復興国立公園 みちのく潮風トレイルを舞台とする連載小説「潮風の速さはどれくらい」は、2021年11月から2023年11月までの2年間、北東北の楽しい暮らしを提案するエリアマガジン rakra(ラ・クラ)に掲載されました。

現地リサーチをヒントに作家・南海遊氏が物語をつくり、その物語を受けてPhotographer・大谷広樹氏が現地を訪ねて写真を撮影。二人の共作により、物語と現実が入り交じる、独自の世界が生み出されました。

この春、小説の舞台となった「みちのく潮風トレイル」各施設のご協力により、青森・岩手・宮城で撮影した写真を使った、ポスターと手づくりの写真集、掲載誌を集めた巡回展が開催されることになりました。

青森・岩手・宮城の太平洋沿岸には、心を動かす美しい場所や瞬間がたくさんあります。この巡回展をきっかけに、さらにたくさんの方がみちのく潮風トレイルを知り、楽しんでくれたらと心より願っております。お近くの展示会場へ、ぜひ足をお運びください。

【展示時期(予定)・会場】

展示期間は、各施設の都合により変更になる場合があります。お出かけの際は、各施設にお確かめください。
2024年4月  名取トレイルセンター 開催中
2024年5月頃 南三陸・海のビジターセンター
2024年6月頃 碁石海岸インフォメーションセンター
2024年7月頃 浄土ヶ浜ビジターセンター
2024年8月頃 北山崎ビジターセンター
2024年9月頃 種差海岸インフォメーションセンター

STORY

「みちのく潮風トレイル」。
青森県から福島県までの沿岸をつなぐ、全長約1,000kmを超えるトレイルコース。それは、人の営みと自然の波際を歩く、長い道のり。
そんな道のりを、見ず知らずの二人がそれぞれに、北と南から旅立つ。

「あれから十年。私はどんな大人になっただろう」
恩師との想い出の灯台を目指して、八戸を出発する二十四歳の女性、楠川 翠。

「僕の人生は結局、歩きながら出逢ったものばかりだった」
かつて妻と過ごした街を訪れるため、石巻を出発する四〇歳の男性、神原 健次。

やがて二人の間で、SNSを通じた言葉の無い交流が始まる。
それぞれの旅で自然と出逢い、人と出逢い、そして過去の自分と出逢い、二人は少しずつ近づいていく。本州最東端の岬、魹ヶ崎を目指して。

——あの日からの十年を越えて、それぞれの速さで歩き続けた二人の旅。

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旅する小さな写真集

連載小説「潮風の速さはどれくらい」のために、Photographer・大谷広樹氏が撮影した未公開カットを集めて「旅する小さな写真集」を作りました。写真を貼り、小説家・南海遊氏が描く小説の一節を添えた、手づくりのアルバムです。Book&Space旅空間さん(十和田市)で展示いただいておりますので、この機会に是非お出かけください。
また、「旅する小さな写真集」を展示いただけるお店様を募集しています。
ご協力いただけるお店様がございましたら rakraまでお気軽にお問い合わせください。

登場人物

楠川 翠

青森の博物館に勤める学芸員。岩手県宮古市の魹ヶ崎を目指して、みちのく潮風トレイルを南下中。
Instagram:@gusconeri8

神原 健次

東京から故郷の石巻に戻り、地元の小さな出版社に入社。「あの岬」へ向かって、みちのく潮風トレイルを北上中。
Instagram:@k.cambanella

掲載号の紹介

第1回 パラシュート
九月のある日、楠川 翠は一冊のパンフレットを手にする。それは東北の沿岸を縦走するトレイルについての案内だった。トレイルは専門外だったが、その地図を眺めていて思うところがあった。
rakra vol.108 2021年11・12月号 に掲載。


第2回 ウォーター・ボトル
タウン誌の取材で石巻の離島・田代島に行くことになった神原 健次。田代島を歩くと、人懐っこい猫が、あちこちから現れた。田代島から船に乗り、網地島へ。山の中をしばらく歩いてから、舗装された大きな一本道に出ると、風の音が変わった。
rakra vol.109 2022年1・2月号 に掲載。


第3回 レイルロード・クロッシング 
二月、楠川 翠は真冬のトレイルに出かける。歩いていくと、まるで道に寄り添うように線路が姿を現し始める。澄み渡った冷気のせいで、いつもより高く感じられる快晴の空の下、郷愁の源へ向けて歩き続ける。
rakra vol.110 2022年3・4月号 に掲載。


第4回 ローリング・ストーン 
七つ年下の従兄弟と久しぶりに連絡をとった神原健次は、いっしょに南三陸町を歩くことに。神割崎をスタート地点に、商店街に立ち寄り、田束山を登る。太陽が辺りを神々しい光で染め始めた頃、二人の前にそれは現れた。
rakra vol.111  2022年5・6月号  に掲載。


第5回 ソフトクリーム 
一泊二日の行程で、三度目のトレイルへ。高家川を渡渉している途中、楠川翠は立ち止まって周囲を見渡す。海へと流れていく水、六月の新緑、そして太陽と青い空。足に感じる水の冷たさまで、これ以上ない贅沢なものに思えた。
rakra vol.112  2022年7・8月号  に掲載。


第6回 パッチワーク 
太陽の照りつける夏の日、何度目かのトレイルに旅立った神原健次。前回は見られなかった「潮吹き岩」の水柱を見て、足取りも軽く歩き出す。清々しい解放感、懐かしい再会、そして巨大な漁港。しかし、風待ち地区と呼ばれるエリアまで進むと、雰囲気が一変する。
rakra vol.113  2022年9・10月号  に掲載。


第7回 ブローウィン・イン・ザ・ウィンド
二日間のトレイルを計画した楠川翠は、くろさき荘に前泊して、朝の八時頃から歩き出す。自然歩道に入ってすぐは緩やかな野道であったが、途中からアップダウンが激しくなる。曲がりくねった長い階段を下り、急角度のコンクリート階段を這うように登る。登り切ったころには汗だくだった。
rakra vol.114  2022年11・12月号  に掲載。


第8回 ドクター・ブルカニロ
兄、真一とトレイルに出かけた神原健次。何の話をすべきだろうと考える健次に、兄は一方的に語りかけてきた。不敵な笑みを浮かべながら兄が口にした常套句に、かつてこんな風に話していたことを懐かしく思い出す。健次は、高校を卒業するまでの兄の事しか知らないことに気づき、思いを馳せる。
rakra vol.115 2023年1・2月号  に掲載。


第9回 ロスト・ワールド
二月、楠川翠は始発で久慈に向かい、三陸鉄道に乗り換えて車窓から外の景色を眺めていた。スタート地点の岩泉小本駅で、恐竜の化石のレプリカを見て、ふと幼いころに呼んだ恐竜小説を想い出す。病室で退屈している翠に、母親が持ってきてくれた本だ。
rakra vol.116 2023年3・4月号  に掲載。


第10回 ドント・ルック・バック・イン・アンガー
魹ヶ崎を目指す理由、大切な人との思い出の場所、前回のトレイルでの兄との会話。これまで朧気だった風景が、ゆっくりと見え始めたような感覚と強い混乱。SNSを通じた交流から、二人は少しずつ近づいていく。神原健次はスマホをポケットにしまい、トレイルに出発する。
rakra vol.117 2023年5・6月号  に掲載。


第11回 パラシュート #2
最後のルートを、三日間で歩くことにした楠川翠。三日目の午後、魹ヶ崎に到着する予定で、ウシカニさんと歩き始める。空は澄み渡るような快晴で、潮風が心地よい。木漏れ日と潮風、そして波の音。まるでこれまでの旅の良い所を濃縮したような道だった。
rakra vol.118 2023年7・8月号  に掲載。


第12回 ドクター・ブルカニロ #2
神原健次は、楠川と連絡が取れないまま、二泊三日のトレイルを計画する。その前夜、釜石市で働く大学時代の友人と、居酒屋で酒を酌み交わす。友人は、神原の空になったぐい吞みに酒を注ぎ、いつものように人当りの良い笑みを浮かべた。
rakra vol.119 2023年9・10月号  に掲載。


第13回 スピード・オブ・サウンド
姉吉キャンプ場から山道に入り、あの岬に向かって歩き出した神原健次。かつて息を切らせて歩いた道を、今は難なく登ることができる。木々の隙間から差し込む日差しを浴びながら、これまでの旅で出逢った人たちに想いを馳せる。
rakra vol.120 2023年11・12月号  に掲載。

北東北の楽しい暮らしを提案するエリアマガジン rakra にて、全13回連載。

三陸復興国立公園
みちのく潮風トレイル

青森県八戸市から福島県相馬市までの太平洋沿岸をつなぐ、全長1,000kmを超えるロングトレイル。自然が織り成す圧倒的な美しさと共にある人々の暮らしや歴史・文化を、潮風に揺られ、感じながら歩くことができる。

STAFF

小説家 南海 遊(みなみ・あそゔ)

第24回星海社FICTIONS新人賞を受賞した『傭兵と小説家』で2019年デビュー。近著に『傭兵と小説家2』『箒の騎士』。

Photographer 大谷 広樹(おおたに・ひろき)

大学を卒業してから写真を学び、後に写真家・雨堤康之氏に師事。現在はフリーランスで広告分野を中心に活動している。